#002 Wenshu Su
今年の春、夫の仕事の関係でスーちゃんはイギリスに引っ越す予定だ。翻訳の仕事はもちろん続ける。そのためにこの仕事を選んだというけれど、もともとの仕事だった建築を続けたいという気持ちはなかったのだろうか?
「それはやりたいよ。やりたいけど、たぶんまたどこかに引っ越すし就職はできないし。建築もCAD(※)だけならフリーでもできるけど、デザインから建てるところまで全部自分のものにはできないでしょ。そういうのは嫌だから」
翻訳なら、本一冊をまるごと、言葉を選び、自分の感じた文体で書くことができる。そこが好きだと話す。
(※)CAD=Computer Aided Design。パソコンを用いた図面の作図。建築物の立体を平面図・立面図・断面図、あるいは透視図等の図面として表現し、それにより建築物を施工していく。

そして読むのも訳すのも一番好きなのは小説。でも訳してみたい作品は、すでに他の人に取られてしまっていることが多いという。
「前に有川浩の『植物図鑑』を訳したけど、一番有名なのは『図書館戦争』でしょ。あれができなかったのが悔しい」
だから最近は、おもしろい本を見つけたらこんな作品があるよ、と出版社に持ち掛けているそうだ。そもそも翻訳者になったきっかけだって、自ら自分の翻訳を売り込んだのが始まりだった。道は自分で切り拓いてきたのだ。
イギリスでの生活が落ち着いたら、写真を撮ってそれにエッセイをつけた本を書いてみたいという。いつか、何でもないことのように「これ私の本」と見せてもらえる日が、スーちゃんだったら本当に来る気がしている。それまで負けちゃいられないな。
(Photo by motoko)
蘇文淑(スー・ウェンス)
1974年台湾生まれ。1999年Syracuse University Graduate School of Architecture卒業、2005年末から京都に住み始める。翻訳者。これまでに翻訳した作品は『源氏物語樂讀本』『植物圖鑑』『架構的生態系』『漫談設計』など。
元建築士である経験を活かし、2011年より台湾のWebマガジン綠・建築家でコラム《日本建築Case Studies》を連載している。
あとがき
最後までお読みいただきありがとうございました。
スーちゃんはいろいろな面をもった魅力的な人で、本当はお酒が好きだったりここには書けないような武勇伝もあるのですが(笑)、私がスーちゃんの一番素の部分じゃないかなぁ…と思う、ものごとへの真摯な取り組み方にスポットを当ててみました。少しでも伝わっていれば嬉しいです。
次回は元書店店主でアートギャラリーのプロデューサー、DJで茶人でもある僧侶、月澤 信貴さん。更新日は今月中を目標で。。。
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